寝るときに入れ歯を外すべきか否か、迷ったことはありませんか?
実は、これには明確な答えがありません。
就寝時は唾液の分泌量が減少することで、細菌が繁殖しやすくなるため、むし歯や歯周病などに影響を与える可能性や、小さな部分入れ歯の場合、外れて誤飲してしまう可能性も加味し原則的には外して就寝されることをおすすめされる場合が多いです。
ただし装着した状態で寝ることで、歯ぎしりなどの力から残された歯を保護したり、歯列が変化してしまうことを防ぐことができます。また口呼吸になりづらくなるといったメリットもあります。
患者様ひとりひとりに対して適切な方法は違うので、主治医の歯医者さんの指導に従っていただくことが大切です。どういった場合にどのような指導をされることが多いのか、いくつかのケースをご紹介したいと思います。
▼歯周病やむし歯、誤嚥性肺炎のリスクが高いケース
唾液には水分そのものにより汚れを洗い流す自浄作用や、唾液成分による抗菌効果などがありますが、就寝中は体の活動も低下するのに併せて唾液の分泌量も低下します。その影響で細菌類が繁殖しやすく、留め具がかかっている歯や義歯で覆われている歯のむし歯や歯周病のリスクが高くなります。
また、高齢者の肺炎の大きな原因となっている誤嚥性肺炎のリスクにも関与してきます。特に不衛生な状態で義歯を装着したまま就寝することは大きなリスクが伴いますので注意が必要です。
▼歯ぎしりや食いしばりが強い場合
歯ぎしりや食いしばりが特に強い方の場合、入れ歯をしないで寝ることで、残っている歯に過剰な負担が掛かって弱らせたりすることや、口の中を傷つけてしまうことがあります。また、歯のあるところとないところで、食いしばったときの圧力のかかり方が違うために、歯並びが崩れてしまう恐れがあります。歯並びが変わってしまうと、せっかく作った入れ歯が合わなくなることもあります。 入れ歯を入れることで、過剰な力からの歯の保護を意図する場合には装着したまま就寝する方が望ましい場合があります。
▼入れ歯がないと違和感で眠れない場合
入れ歯を入れることで顎の位置が安定するため、患者さんの中には、入れ歯をしたままでないと違和感を感じ就寝の妨げになる場合があります。この場合には入れ歯を装着して寝るよう指導されることがあります。
装着したまま就寝する場合でも、外して就寝する場合でも、入れ歯は清潔に保つことがとても大切です。就寝時につけたままにする場合は、特に外して洗浄し、ご自身の歯もしっかりと磨くことを忘れないようにしてください。
入れ歯は大切な身体の一部として使用するものです。分からないことや不安な点は自己判断せず通っている歯医者さんに相談していただき、安心して入れ歯を使用しましょう。