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2021年08月20日【健口サプリ #3】大人のむし歯予防の3つのポイント

皆さん、こんにちは。
歯科衛生士/表情筋トレーナーの内田佳代です。

前回は「人生をともに歩むあなたの口の中の構造」についてお知らせしました。歯の本数や歯の構造について理解を深めていただけましたか?

今回は「大人のむし歯予防の3つのポイント」です。むし歯になる原因やメカニズム、むし歯を作らないためのポイントをお知らせします。※本ページでは、フッ化物、フッ素化合物を「フッ素」と表現しています。また、歯磨き用のジェルやペーストなど歯磨剤を「歯磨き粉」と表記しています。

その3つとは、

【ポイント1】毎日の歯磨きに加え、フッ素をうまく利用しよう

【ポイント2】食事の頻度や甘いものを食べる回数など生活習慣を見直そう

【ポイント3】定期的に歯科検診を受け、プロによるチェックとクリーニングを行おう

 

むし歯は、歯磨きだけでは防げない

本題に入る前に少しだけ、前回のおさらいです。歯の構造は3層構造でしたね。

エナメル質は、体の中でも一番硬い組織。とても硬い組織ですが、酸に弱く溶けてしまうという弱点があるのです。

むし歯予防といえば「歯磨き」をしっかりしていれば十分だと思われがちですが、残念ながら歯磨きだけではむし歯は防げません。むし歯を予防するためには、むし歯菌を減らしその活動を抑えること、歯を丈夫にすることが大切です。

実は、最もむし歯予防に有効なのは、フッ素(※)を上手く取り入れることです。むし歯予防で科学的に根拠があるものの1つが「フッ素の活用」です。

 

フッ素は歯質を強くする

歯は再石灰化(一度むし歯になりかけても元に戻ろうとする力)をすることが分かっており、初期のむし歯の場合は、適切なケアでむし歯の進行を抑えることができます。再石灰化に最も有効なのが、フッ素です。

また、フッ素はエナメル質を強化し、むし歯への抵抗力を高めるため、毎日のブラッシングにフッ素をうまく取り入れることで、むし歯のリスクを下げることができます。

日本では、2017年に市販の歯磨き粉などに含まれるフッ素濃度の上限が1000ppmから世界標準の1500ppmに引き上げられました。歯科医院で塗布する高濃度フッ素(9000ppm)も有効ですが、それに加え低濃度フッ素に毎日触れることにより、歯質を強化することができます。

フッ素の活用は、フッ素入りの歯磨き粉を利用することがポピュラーですが、より簡単に行うことができるのが「フッ素洗口」です。歯磨き後、もしくは寝る前に一定濃度のフッ化ナトリウム溶液で、ブクブクうがいを行うことでむし歯を抑制します。

 

むし歯のリスクを下げる生活を目指そう

もちろん日々のブラッシングも大切です。

むし歯になりやすい部分は、歯の噛み合わせ部分や歯と歯の間。歯磨きだけでは落とせないのが、歯と歯の間です。歯間の清掃には、フロスや歯間ブラシが有効です。人により口の中の状態が違うため、歯ブラシを含めフロスの使い方など、かかりつけの歯科医院で確認してもらいましょう。

次に、むし歯菌の活動を抑えるには「食習慣」の見直しがポイントになります。

「ダラダラ食べ」をしていませんか?

口の中に食べ物が入ると、口の中は酸性に傾きます。これは、むし歯になりやすい環境に歯がさらされるということです。体は、酸性に傾いた口の中を、唾液の力で中性に戻そうとします。中性に戻るのには時間が必要です。

頻繁に食べ物が口の中に入ることで、常に口の中が酸性になるため、歯は再石灰化を行う余裕がなくなり、むし歯になりやすい環境になります。また、甘いものはむし歯の原因になることは有名ですが、むし歯菌が好むのが糖質(主に砂糖)。糖の摂取頻度がむし歯リスクを高めますので、間食が多い方や甘いものをよく摂る習慣がある方は、要注意です。

これ以外にも萌出したばかりの永久歯は、まだ弱いためむし歯になりやすいなど、歯の質などもむし歯になりやすい要素となりますし、唾液量と唾液の種類にもむし歯のなりやすさが関係しています。

唾液にも種類があり、ネバネバした粘液性の唾液と、サラサラした漿液性の唾液があります。サラサラ唾液が多い人は、自浄作用が働くため、むし歯になりにくい傾向があり、反対に口呼吸などで口が常に渇いている人は、口の中が乾くことで菌が繁殖しやすい環境になるため、むし歯になりやすいといえます。

大人がむし歯になりやすい部位

むし歯になりやすい部位は「歯と歯の間」や「奥歯の咬合面(歯が噛み合う凸凹した部分)」ですが、大人だけがなりやすいむし歯の部分があります。それが、歯の根の部分のむし歯です。

50代からのむし歯の治療で多いのが、「根面う蝕」と言って、根の部分(セメント質)にできるむし歯です。多くの場合、歯周病や加齢により歯ぐきが下がり、その部分が酸に侵されることで起こります。

歯根部は、ごく薄いセメント質で覆われていて、エナメル質よりも柔らかく酸に溶けやすいのです。フッ素=子どものむし歯予防と思われがちですが、大人のむし歯予防にもフッ素は有効です。

また、たとえむし歯が見つかったとしても、初期の段階でのむし歯は再石灰化が見込めるため、削らずにフッ素塗布等で様子を見ることがあります。初期むし歯を見つけるためにも、定期的に歯科検診を受けることも有効です。

 

むし歯予防の3つのポイント

現在の研究でむし歯は、単純に甘いものの摂取や歯磨き不足だけでなく、色々な要因が重なることで、むし歯のリスクが高まることがわかってきています。以下の3つのポイントを守っていただけると、むし歯のリスクはグンと下がります。

・毎日の歯磨きに加え、フッ素をうまく利用しよう

・食事の頻度や甘いものを食べる回数など生活習慣を見直そう

・定期的に歯科検診を受け、プロによるチェックとクリーニングを行おう

ぜひ、実践してみてください。

 

次回の健口サプリは、『全世界で最も蔓延している病気「歯周病」の原因と検査』についてお知らせします。

 


内田佳代(うちだ かよ) 歯科衛生士・表情筋トレーナー
東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒
早稲田大学大学院創造理工学研究科修了 経営工学修士
「噛むこと」を意識させる、歯科衛生士ならではの表情筋エクササイズ、口元からの美を提案し、全国各地で講演・セミナー開催。ミスユニバース地方大会セミナー担当。NHK「きれいの魔法」など美容番組・雑誌等へ多数出演。ぶんか社「ガム小顔ダイエット」監修。表情筋エクササイズDVD「笑顔づくり編」「スッキリ小顔編」も好評。